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3月のひとこと

●数を持たない民族
数字はあって当たり前のものだと思っていましたが、数字を持たない民族がいることを知って驚きました。

ウガンダの放畜民族ドドスがそうです。例えば、彼らは1人につき200頭あまりの牛を持っていますが、牛が何頭いるかを把握してはいません。1頭ずつ点呼することもありません。ではどうしているかというと、彼らは家畜の全てを個体識別して記憶しているのです。

牛の角の形、体型、体色、耳の切り込みの形などを事細かくチェックし、そこに、販売、贈与、交換、出生、行方不明など、その牛の生い立ちや出来事などを結びつけて覚えることで、全ての牛の違いを明確かつ詳細に記憶しています。すごくないですか!?

興味深いのは、彼らが色の区別もしないところです。赤い物が赤いという認識はしていますが、赤い花と赤い太陽の色は異なる色であるため、「赤」という抽象的な言葉は使わず、自分が見たままを言葉で表現します。

●ブレない生き方(思想)
ドドス民族は、「自分が直接体験できるものしか語らない」という言語制約を持っています。数は直接体験ができません。数を持たないので、カレンダーも時計もありません。

彼らは、自分の身の回りで起きた事や体験を鋭い五感で豊かに表現し、記憶することで、数などの抽象的なものでは表現することができない詳細な情報を他者と交換し合ってコミュニケーションをとっています。

彼らについて研究している人類学者は、彼らのブレない生き方(思想)には学ぶべきものが多くあるとしました。それは何でしょう。

●数のある生活のメリットとデメリット
数字のある世界はとても便利です。今更、数字のない生活など考えられません。ですが、私たちは数を使うことで、あらゆるものを抽象化し、それらの本質を見なくなってしまいました。
数を使うことで得た便利さや迅速さ。でも、その代償として、自分の身の回りの世界で起こる様々なエピソード(思い出)や、エピソードを連ねて作られるマイストーリー(物語)の大切さが忘れ去らそうになっています。

●直接体験談(マイエピソード)
息子たちが幼かった頃のある日の朝、私の祖母から電話がありました。その時、私は何の気なしに、自分が風邪を引いてしまったことを祖母に話しました。その後、息子たちと公園に出掛けて数時間後に自宅に戻ると、玄関のドアノブにビニール袋がかかっていました。
中を見ると、みたらし団子とレシートが入っていて、そのレシートに「心配して来てみたけどいないから帰ります。ばあちゃん」と書いてありました。
寒い中、わざわざ電車を乗り継いで、駅から遠い我が家まで歩いてきてくれた祖母の姿を思うと、会えなかったことを悔いながら、祖母の優しさに涙が溢れ出ました。すぐに電話しましたが、「いいのいいの」と笑う祖母。

あの時に食べたみたらし団子は本当に美味しくて美味しくて(涙)。今でもみたらし団子を見ると、亡き祖母の深い愛情を思い出します。
私が、自分の直接体験で、祖母やみたらし団子について皆さんに伝えるならば、このエピソードを話すと思います☺

●数へのこだわり
私たちは数値を使うことで素早く判断し、そこに自分を合わせたり、こだわったり、気にするようになりました。例えば、成績、体重、服のサイズ、カロリー表示、SNS上の「いいね!」の数など。

気付けば数値に振り回され、自分の五感は放ったらかしになっていることを感じます。
例えば、体重も食べ物を「数値」で見ることが強くなればなるほど、自分のからだを大切にしたり、美味しい物を美味しい❤と思う感覚が乏しくなります。

自分のからだや食べ物、人との関係を「数値」で捉えるようになると、主体性(自分の意志・判断によって、自ら責任をもって行動する態度や性質)が弱まってしまうからです。
数を持たない民族は、数を持てばこうなることを分かっているのでしょう。

●あなたのマイエピソード
摂食障害の克復過程では、自分のからだや食べ物や人間関係を数字で捉えるコトが徐々に減っていきます。何故ならば、自身の持つ感覚を大切にできるようになっていくからです。
数値と距離を置くことは、本来の自分や、安心・安定を取り戻すことでもあるのです。

そして、主体性を高めるためにも、便利な生活により疎かになってしまっている、自分の五感から得る直接体験(思い出や物語作り)を大切にしてほしいと思います。

自分にとって●●とは何だろう?と考えてみてください。例えば、私にとってクリームソーダーは、祖母&みたらし団子と同じように、私と家族だけのかわいい思い出があります☆彡
あなたにもあなただけのエピソードがたくさんあると思います。それらがあなたらしさを作っていきます。大切にしてください。

私のカウンセリングが、皆さまにとって良いエピソードの1つになりますように。今月も皆さまとお会いできるのを愉しみにしております♡

令和2年3月1日
摂食障害カウンセリング あや相談室主宰
摂食障害カウンセラー 長谷川あや

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