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勝手に悲劇のヒロイン

バイトの最終日の朝、私は格好良い兄ちゃんに「なんでこんな
ところでずっと働いてんの?」と聞いてみた。
「山中湖が好きだからだよ。それだけ。でも別のことがしたく
なったらそっちをやると思うけどね」
「ふぅーん。いいなー。私はしたいことがないんだよね。
全然自分に自信がないし。だからみんなとも上手くつき合えないのかな・・・」
私は、彼から優しい言葉をもらえると期待しつつ上目使いで言った。
すると彼は私を見ずに、遠くの方を見ながら答えた。
「そう思っているといつまで経ってもしたいことが見つからない
んじゃないのかな。俺だって自信なんて全然ないよ。
何がしたいのかも分からない。だからいろいろやってんだと
思うし。うだうだ考えていても何も始まらないし。
でもさ、あやちゃんがこうしてここで働いているのは
自分の意志でだろ?それってしたいことしているってことに
なるんじゃないの?」

みんなとお別れをしバス停に行く途中、一緒に働いた
調理師のおっちゃんに会った。
「そっか。あんた今日で最後か。お疲れさん!」
「ありがとうございます。でも私がいなくなると
ご飯の支度が時間通りに終わらない気がして心配です(苦笑)」
「ははは。居なくなった後の心配なんてしなさんな。
確かにあんたはよくやったよ。でもなー。
何でもかんでも自分一人でやっちまうっつうのはよくなかったな。
みんなで助け合うっていう気持ちがないとな」

同じ日に、しかもバイトの最終日に言われた、二人の言葉は
私の心に深く深く突き刺さった。
大した言葉じゃなかったかもしれない。
悪意も全く感じられかなった。
でも今まで頑張ってやってきた「私」を完全に否定された気がした。
みんなに甘えんなよ!お前は協調性がないな!
そう言われた気がした。

帰りのバスの中でも、彼らに言われた言葉がずーと頭の中を
グルグル回っていた。
新宿に着いた時、今までずっと張りつめてきた糸がぷつんと
切れた。無性に過食したくなった。
ハー、ハー、ハー。心臓がバクバクする。手が震える。
息が出来ないほど苦しい。早く何か口に入れなくちゃ。
小走りでキオスクでスナック菓子を買い、買った先から
食べた。
コンビニで菓子パンを買って歩きながらもずっと食べ続けた。
家に着いた後も自分の部屋に直行しずっとずっと食べ続けた。
今まで我慢してきたものをこれでもかというほど口に押し込んだ。

頑張って働いたのに。頑張ってみんなと仲良くしようとしたのに。
どうして私が悪いの?やっぱり私が太っているからだ。
みんな、私のことバカにしていたんだ!
格好良い兄ちゃんだってかわいい子には優しかった。
細い子ばっか助けてた。
「あんたがいないとどうなるんだろうねーっ」ていつも
おっちゃん、言っていたじゃんか。
みんなのうそつき!

気が付いたら朝になっていた。
パンパンになった顔のまま私はまた家を出た。
今日から一週間、とあるお寺で行なわれる一週間断食に
参加するからだ。
でもこのプランを立てた時のあの気力と体力はもう全然
残っていなかった。

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