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あっちゃん

忘れもしない。あれは短大の合格発表の日の夜だった。
「やった~!!これでもう勉強しなくて済むぅ♪」
その日は興奮していてなかなか眠れなかった。
水を飲もうとして台所に行った私は温泉まんじゅうの箱を見つけた。
中のまんじゅうを1つだけ口にした。もう1つ、もう1つ・・・
なにこれ?なにこれ?なに?なに?
ずっと黙って耐えてきた体の反動が始まった。
でもずっと食欲を抑制してこれた私が
それを納得できるわけがなかった。

私は過食する「私」が大嫌いだった。
過食する自分は絶対「私」とは認めなかった。

私は過食する「私」の存在を異常であるとするために
それに「あっちゃん」と名付けた。
過食したくなると「あっちゃんがきた」と言って過食した。
あっちゃんが来ると人格ががらりと変わる。
いつしか私は自分は本当に多重人格者なのではないか?と
思い始めた。

親が必至に探した何人もの「名医」に会った。
肩書きがすごければ、有名ならば、きっと治してくれる!
って。
誰だって期待するよね?

私は調子の良い時しか外に出られなかった。
しかも調子の良い時は、治った!と思っているので
調子の悪い時の話はしたくなかった。
「元気そうですね」「はい。もう大丈夫です」・・・(苦笑)。

何をどうしても過食はとまらない。
どうしたらいいの?
太りたくない。でもどんどん太っていく。
健康になっていくなんて思えないよ!
こんなに異常なのに、こんなに辛いのに
なんで誰も分かってくれないのよ!!

過食しないときは拒食。拒食の時は○。
過食の時は×。
○×○×××○××××・・・もういやっ!!
太るくらいなら死んだ方がまし!!

5日間連続の過食だった。5キロ太った。
睡眠薬を1箱全部口に放り込んだ。
これで5日間くらい眠れたらいいな~。
その間過食しないで済むもん。
もし起きれずに死んじゃってもそれはそれで
本望だ!!
私は急いで布団の中に潜り込んだ。

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