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2月のひとこと

●ネガティブな気持ちを口に出し始めた時から、生きるのが楽になった。

アメリカの元競泳選手で金メダリストのマイケル・フェルプス氏(32)がうつ病に悩み苦しんだ経験をメンタルヘルス関連の会議で公表しました。
*CNNの記事参照

フェルプス氏は、過去の大会でわずか0.5秒の差で敗北しメダルを獲れなかった時に味わった悔しさをバネにし、次々に世界記録を更新。アテネオリンピックでは念願の金メダルを獲得します。
「王者になるには何が必要か」という質問に、彼は即座に「簡単なことだよ。努力すること、打ち込むこと、そして諦めないことさ」と答えています。
これらは決して簡単なことではないと思いますが、「いつもハングリーに上を目指していた」「自分の限界を極めたかった」と言う当時の彼にとってはむしろ、弱音を吐いたり弱い自分を見せることの方が難しかったのでしょう。その証拠に、メダルを獲得すればするほど、彼は強い孤独と孤立を感じるようになっていきます。

●全力で勝ち取った後に、必ずその反動が来る
オリンピックが終わる度に彼の気分は激しく落ち込みました。最初は、「何かがおかしい」と感じる程度でしたが、飲酒運転で逮捕され有罪判決を受けてしまいます。
北京オリンピックで史上最多となる8個の金メダルを獲得すると、今度は大麻を吸っている現場を写真に撮られ、信頼を大きく失いました。
当時を振り返り、薬物は「何かから逃げ出したい、逃げ出そうとする時の手段だった」「逃げようとしてほとんど毎日、自分で自分を治療しているようなものだった」と彼は言いました。
ロンドンオリンピックの後は深刻な抑鬱状態に陥ります。「水泳をしたくない。もう生きていたくもない」と寝室に引きこもり、何も食べず、ほとんど寝ずに、ただただ生きるのが嫌だとうずくまっていました。
ようやく彼は自分は治療を受ける必要があることを悟り、治療施設に入所します。

●今の気分なんて分かるか!
施設に入所し、これからどんな変化がやって来るのかと緊張し震えていた彼を、毎朝6時に看護師が起こしに来ます。そして、壁に張ってある8つの感情を見てどれが自分の気持ちかを示してと言います。
その頃の自分について彼は、「今の気分なんて分かるか!とてもむしゃくしゃして嫌な気分だった。僕は朝は苦手なんだよ!」と当たり散らしたのを覚えていると言って笑いました。
「だけど、そんな気持ちを口に出し始めた時から、生きるのが楽になったんだ。なぜ10年前からこうしていなかったのか!って何度も自問したけど、その時はまだ用意ができていなかったんだ。かつての自分は話したくないこと、向き合いたくないことを常にしまい込み、どこかへ片付けてしまうのが得意だったんだ」

●今なら「大丈夫じゃなくても大丈夫」だと分かる。
自分の弱さを誰かに打ち明ける勇気がいかに大切なことかを悟った彼は、「打ち明けるのが怖い。だから治らないし、自殺率が高くなる」と強く訴えます。

●ありのままの自分を認めることは当たり前のこと
うつ病になる前のフィリップ氏は、自分の強さしか認めていませんでした。そして、そのことを何らおかしいとも思っていませんでした。
でも、不安、孤独、寂しさなどの自分の弱さ(ありのままの自分)を認めるということは、自分の感じ方を「そのまま認めてもらう」ことであり、実は当たり前のことです。ありのままを認めないことの方がおかしいのです。

彼のように、ありのままの自分を認めなかった(認められなかった)人が、自分の弱さを他人に見せはじめると、徐々にありのままの自分を認められるようになります。
弱い自分を他人に認めてもらえて初めて、「弱い自分も自分の大切な一部」なのだと受け入れられるようになるのです。
そして、今まで、弱い自分を認めずに生きて来たことがどれだけしんどいことだったかに気づきます。と同時に、弱い自分でも生きていける、生きていい。大丈夫じゃなくても大丈夫なんだと思えるようになるのです。
*「今の自分を受け入れること」とは、「何らかの理由があってその結果、今の自分はこうなっているんだなと認知すること」です。「なぜこうなってしまったんだ!?」と原因追求や犯人捜しをすることではありません。

●非合理的ビリーフ
フィリップ氏は、かつての自分は話したくないこと、向き合いたくないことを常にしまい込み、どこかへ片付けてしまうのが得意だったと言っていますが、これは非合理的ビリーフの1つ、「強くあれ!!(いつも強くあり続けなくてはならない=弱いところを人に見せてはいけない=感情を表に出すべきではない)という強い信念を持つ人に多く見られる特徴です。

非合理的ビリーフには、他に「完全であれ!」「もっと努力しろ!(休むな!)」「他人を喜ばせろ!(NOと言ってはいけない)」「急げ!(無駄な時間を過ごすな!)」などがあります。
私のカウンセリングでは、「なぜ、自分はこうも生き辛いのか」という皆さまのお悩みの答えのヒントとなるビリーフチェックと、その分析&アドバイスが可能です。興味のある方はぜひご相談ください♡

かつての私も、「完全であれ!」「もっと努力しろ!」「他人を喜ばせろ!」「急げ!」という非合理的ビリーフが強く、そのせいで思うように生きられず、何をどうしたらいいのかも分からず、その不安をごまかすために拒食や過食をしていました。そんな自分を嫌い、責めてばかりの日々でした。
でも今は、「大丈夫じゃなくても多分大丈夫だろう」と思えます。非合理的ビリーフが格段に減ったからです。
それは、ダメな自分でも受け入れてくれる家族や友達や知人がいることを、頭ではなく、彼らとのやりとりの繰り返しの中で実感していくことができたからです。
これには時間が必要でした。心の病の克復には時間がかかると言いますが、そうではなく、対人関係のリハビリには時間が必要なのです。

うつ病を克復し、自分の感情を語れるようになった今の自分は、「オリンピックで金メダルを取るよりはるかに素晴らしい」「あの時、自殺を選ばなくて本当に良かった」と話すフェルプス氏の飾らない笑顔がとてもチャーミングでステキでした。

ストイックで○か×の考え方しか持っていなかった彼が、なるべくして心の病を患い、そこから勇気を出してダメな自分をさらけ出し、それを許し・許されたことで得られた△(自由と解放感)は、何ものにも変えられない幸せ(安心感)だと思います。

私のカウンセリングも、皆さまの△が見つかるひとときになればいいなと思っています。今月も皆さまとお会いできるのを、感情を聞かせて頂けるのを愉しみにしています。どうぞよろしくお願いいたします☆彡

2018年2月1日
摂食障害カウンセリング あや相談室主宰
摂食障害カウンセラー 長谷川あや

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